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 前作事と捕鯨シーズン

前作事と捕鯨シーズン


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鯨組の船や銛その他の諸道具を、シーズン前やシーズン中に新造・修理する作業を前作事と言う。
 前作事を行うとともに、シーズン以外に諸道具を格納保菅する前作事場は、解体・加工を行う納屋場に併設する場合が多く、中央には船を曳き上げて保管する広場があり、周囲には鍛冶屋、桶屋、船大工の作業場や、原料や完成品を収める蔵が並んでいた。
 前作事は夏から始まる。西海では8月中旬、網加子として雇われた瀬戸内海の漁民の先発隊が到着し、鯨網に用いられる苧網の製作にいそしむ。なお小綯い(下拵え)の作業には、地元の婦人が雇われた。漁に用いる船も船大工によって修理・新造されたが、御崎組では毎年勢子船を3艘、持双船を1艘、双海船を1艘ずつ新造した。鍛冶屋も多忙を極め、沖で使う道具だけでも羽矢(早)銛150本、萬銛150本、剣45本にのぼるが、納屋場で使う解体用の各種包丁も膨大な数になる。桶屋も鯨油を詰める4斗樽の製作に忙しい。
また組出し(操業開始)が近づくと、各地から雇い入れた加子や羽指らが到着する。
 西海では暦で小寒の10日前を期して、鯨組の操業開始である組出しとなる。呼子の中尾組を例に取ると、組出前には今季の大漁を期して神社に絵馬を奉納し、組出の当日には組主の家などで宴を開いて門出を祝った。組の主だった一同が着座する前で、太鼓に合わせて鯨唄が唄われ、羽指達が円を組んで羽指踊を踊った。羽指踊が行われるのは、あと正月と組揚がり(操業終了)の時だけである。
 宴を終えると、一同は船出して納屋場に押し渡った。西海の鯨組の要員は、シーズン中は納屋場に起居しながら捕鯨に専従した。
西海捕鯨漁場では、下り鯨を対象とする冬浦の操業が2月頃まで行われ、その後上り鯨を対象とする春浦が3月末頃まで行われた後、組揚がりとなった。